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検査の種類(応用編)

詳しい検査

血液検査や尿検査である程度確定診断が出来た場合、その“原因”を調べるためにはもう一歩踏み込んだ検査が必要になります。
老猫の場合は老化に伴う腎機能の低下からの腎不全である場合が多く、様々な検査を行ってもこれといった原因が見付からない事も多々ありますし、仮に腫瘍や嚢胞などが発見されても対処出来ない場合もあります。
しかし、若猫の場合は腎臓になんらかの問題が発見されることもあり、原因を知っておくことで気をつける点や、今後の方針を決定するための判断材料になるかもしれません。

詳しい検査を行い原因が分かったとしても、現在の獣医療では対処できない場合もありますが、腎不全の状態が腎臓に原因があるとは限らず、結石などの尿路疾患や異物・オモチャ等の誤食、心臓病といった腎臓以外の疾患が見付かる場合もありますので、血液検査や尿検査といった基本検査以外の検査も視野に入れた方が良いと思います。

画像診断

動物医療においても“CT”や“MRI”などの画像検査はありますが、腎不全では必要に応じて“レントゲン”と“エコー”の検査を行います。

【レントゲン(X線)検査】

レントゲンでは基本的に液体や骨、金属や結石は白く写り、空気は黒く写ります。
脂肪と肉では、脂肪の方が黒く写り、肉はやや白く写ります。

例えば、心臓を写した時、うっすらと黒く写る「肺」の中に、白く写る「心臓」が見えます。
これは「肺」には空気が入っているので黒く写り、「心臓」には血液が沢山入っているので白く写るためです。

レントゲンでは、主に臓器の位置や大きさ・形、結石や金属等の異物の有無を確認します。
肺等に水が溜まっていないかどうかを確認する為にも行われる検査ですが、基本的には体内のシルエットを写しだす検査ですので、臓器の内側の状態を知ることは難しい場合もあります。

例えば腎臓を見た場合、位置や大きさの確認は容易に出来ますが、もし腎臓が肥大していたとしても「腎臓が肥大している」という事実しか分かりません。(極端に言うと。)
もちろん、「腫瘍かもしれない」という推測までは出来る場合もありますし、結石が原因で尿路閉塞をおこして水腎症になっている場合は結石が写ることもあります。
なぜ腎臓が肥大しているのかを知るためには別の検査が必要になりますし、レントゲン検査で異常がないように思えても、別の検査で異常が見付かる場合もあります。
多発性嚢胞腎などが進行した場合にはレントゲンで異常が見られますが、初期では腎臓の表面や大きさに変化がほとんどないのでレントゲンでは診断が困難です。

通常のレントゲン検査では臓器の内部までを写す事は出来ないと書きましたが、ある事を行うことで臓器によっては内部の異物をある程度確認出来ることもあります。
これについては後述する『その他の検査』で書きます。
尚、ある程度大人しくしてくれる子であれば基本的に麻酔は必要ありませんが、よく動く子では画像がブレてしまうので無麻酔では無理かもしれません。

【超音波(エコー)検査】

レントゲン検査と違い、臓器の内側(内部)まで確認出来る検査ですが、逆に骨に囲まれた場所(脳や肺)は分かりにくいので、主に心臓や腹部の臓器の検査で用いられます。
肥満の子は超音波が内部まで届きにくい場合もありますし、空気やガスが溜まっている場合も見えにくくなります。

とはいえ、レントゲンよりも内部を把握しやすい検査ですので、腎臓に嚢胞があれば超音波で写りますし、心臓の内部まで分かりますので心筋症の診断にも役立ちます。
腫瘍や結石などの確認にも必要な検査ですので、腎不全や尿路疾患では必須の検査といえるかもしれませんね。

別ページでも書きましたが、腎不全の原因が腎臓そのものとは限りません。
膀胱炎から細菌感染による腎盂腎炎であったり、心筋症による血流悪化や高血圧が原因の場合もありますし、尿管結石による水腎症により腎臓が腫れていることもあります。
中には異物の誤食による胃腸炎や腸閉塞から脱水症状になり腎不全の症状が現れることもあるでしょう。

全ての検査が必要とは限りませんが、特に一刻を争う急性腎不全の場合は画像診断も行うことで助かる命も多いように思えます。
異物などはレントゲンや超音波では写らない場合も多く、後述する造影剤でも微妙な診断になることもありますが、血液検査の結果だけで腎不全と診断し、輸液や療法食での対応だけでは不十分な場合や見当違いの場合もあります。
世話人(飼い主)から言わなければ検査をしない獣医さんもいるでしょうし、相談しても「必要ない」という獣医さんもいますよね。
「する」「しない」の判断基準は様々ですが、検査の種類と必要性は知っておくべきだと思ってます。

血圧測定

この検査は手術以外ではほとんど行われていないのが現状ですね。
一番の理由として、「猫は病院で興奮する子が多いので正確な数値が出にくい。」という事。
確かに、検査を行うことすら難しいかもしれない子もいますが、実際にはどうでしょうか?

「意外とすんなり出来た!」という子も多いので、先入観は捨ててチャレンジするのもいいかもしれません。
病院(獣医師や看護師)との相性もありますし、正直、無駄な恐怖感や威圧感を与えている場合もあると思います。
我が家の長男猫も、3人がかりでも抵抗する病院もあれば、2人だけで大人しく採血される病院もあります。
頑なに拒否し続ける子もいますので、こればかりは「やってみないと分からない!」ですね。

出来る出来ないはともかく、この血圧の検査はとても重要で意義があります。
腎不全ではフォルテコールなどのACE阻害剤といった血管拡張薬を処方される子が多いですが、厳密には血圧を測って(測りながら)服用させるのが理想で、獣医師によってはACE阻害剤とカルシウムチャネル拮抗剤(アムロジピン等)を併用している方もいます。

併用する場合も単体で服用する場合も、注意するのは『血圧が下がりすぎないようにする』事なので、血圧が測定出来るのであればベターでしょうね。
現状では血圧を測らずにACE阻害剤を服用している子が多いでしょうが、中には測定したら基準値内だったという子もいます。
ACE阻害剤は血圧を下げる作用が弱いと言われているので、血圧を測らなくても下がりすぎる子が少ないのでしょうが、併用している子は慎重に服用して下さいね。

また、「フォルテコールの末期での服用は注意する。もしくは中止する。」という事が言われていますが、現実ではどの状態が末期なのか分かりませんよね。
実際、服用を中止するかどうかについても獣医さんにより見解が異なります。
末期での服用中止については何が正解か分かりませんが、中止する理由に“脱水”と“血圧”の問題があります。
血液検査の値を基準にすると、Cre5.0〜6.0前後で検討する事になってしまいますが、そもそもフォルテコールを服用する理由が“血圧”ですので、“低血圧”を基準に考えるのが妥当かと思います。
血圧が測れれば。。。判断のタイミングや考え方も変わってくるかもしれませんよね。

イオヘキソール血漿クリアランス検査

腎機能を評価するGFR(糸球体濾過量)検査の1つで、イオヘキソールという造影剤を静脈注射し、時間の経過による血漿濃度を測ります。
一般的な動物病院で手軽に出来る検査ではありませんが、血漿クレアチニン濃度や尿比重による評価よりも正確に機能評価できる検査ですので、初期の疑わしい場合には役に立つ検査です。

キーワード

・CTやMRI
・ACE阻害剤
・カルシウムチャネル拮抗剤
・GFR(糸球体濾過量)検査

関連リンク

・獣医の医療ミス 超音波検査(エコー)
・株式会社 クリックス イオヘキソール血漿クリアランス検査



その他の検査

以下の検査は積極的に行う検査というよりも、状況に応じて必要になる検査です。

造影検査

【尿路造影検査】

通常のレントゲン検査では写らない臓器の内側を写すため、専用の造影剤を投与する検査。
この尿路造影検査にも『排泄性尿路造影検査』『逆行性尿路造影検査』の2種類あります。

『排泄性尿路造影検査』は造影剤を静脈に投与し、“腎臓”“尿管”“膀胱”といった尿路の状態を確認します。この検査では膀胱腫瘍や結石の有無、左右の腎臓が機能しているかどうかを調べられるので、摘出手術などの術前の腎機能評価にも必要になります。
ただし、この検査は腎機能障害の状態次第では行わない方が良い場合もあります。

『逆行性尿路造影検査』は尿道カテーテルにより造影剤を注入し、尿道結石や異物の確認などに用いられる検査です。
また、腫瘍や結石などの異物や膀胱の内側の状態を確認するために、造影剤と空気を入れる「膀胱二重造影」という検査もあります。

【消化管造影検査】

いわゆる“バリウム”による検査です。
あまり詳しく説明する必要もないと思いますが、経口によりバリウムを投与してその流れを観察します。

胃や腸などの異物を見る事が出来ますが、糸などを誤食した場合は写らない(写りにくい)場合もあり、特に猫のオモチャ系は写らないモノが多いように思えます。
確実に誤食をしたことが分かっている場合、時間が経過していなければ病院で催吐処置をしてもらった方がいいかもしれません。
異物の誤食が疑わしい結果が見られた場合や、異物の大きさによっては開腹手術が必要になりますが、状況によっては“内視鏡”による対応も出来ることがあります。

内視鏡検査

主に食道や胃、小腸、大腸などの消化管内を映像で直接確認できる検査で、異物などが発見された場合、状態によっては内視鏡鉗子で取り除く事ができます。
異物の確認だけでなく、組織を採取して病理検査をしたり、粘膜などの状態を直接見て診断できる検査ですので、様々な病気を疑う場合に必要になります。
内視鏡といえば、一般的には胃や腸などの消化管で使用するように思われますが、膀胱鏡や耳鏡、腹腔鏡などがあり、開腹手術などに比べて動物の身体に負担が少ない検査ですが、全身麻酔と絶食が必要になります。

IBDを疑う場合なども内視鏡によるバイオプシー(生体組織検査)を行うこともあります。

キーワード

・尿道カテーテル
・IBD
・バイオプシー

関連リンク

・ノバルティス 疾患症例集 重篤な多飲多尿が見られた慢性腎臓病の猫
・ノバルティス 疾患症例集 尿の濃縮能を保持したまま糸球体濾過量が急速に低下した猫
・ノバルティス 疾患症例集 初診から約4ヵ月後の検査で慢性腎臓病と診断できた猫



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